「EPI-589の筋萎縮性側索硬化症を対象とした探索的試験」の概要
目的
「EPI-589の筋萎縮性側索硬化症を対象とした探索的試験」(以下、本治験)では、ALS患者様を対象にEPI-589という治験薬を使用します。EPI-589はミトコンドリアの機能低下により発生する酸化ストレスを除去することにより効果を発揮し、新たなALS治療薬となることが期待されます。
本治験では、EPI-589を1日1500 mg内服していただき、EPI-589を投与したときの安全性を検討するとともに、バイオマーカー※1及び有効性を探索的に検討することを目的としています。
※1 バイオマーカー:血液や脳脊髄液に含まれる物質を測定することにより、病気の存在や進行度、治療の効果を示す目安となる生理学的指標の確立を目指します。
治験の方法
本治験は、大きく、前観察期、治療期、事後観察期の3期に分かれます。各期のスケジュールは、図2に示す通りです。
図2 治験スケジュール
対象者
各期における対象者について、条件が異なります。
スクリーニング時
まず、本治験への参加に同意されましたら、診察と検査を行い、あなたがこの治験に参加いただけるかを確認します。治験に参加いただける条件は、最低限満たしていなければならない選択基準1)~9)11)12)を全て満たし、かつ除外基準に抵触する項目がない患者様が対象となります。
前観察期登録時
選択基準10)11)を満たし、かつ除外基準に抵触する項目がない患者様が対象となります。
前観察期終了時
前観察期開始時から12週間後に、診察と病気の進行に関する検査を再度行い、治験参加が問題ないことが確認された後、治療期を開始し治験薬の服用を開始していただきます。選択基準11)を満たし、かつ除外基準に抵触する項目がないことを再度確認し、治療期登録を実施します。
[選択基準]
選択基準とは、最低限満たしていなければならない基準のことをいいます。本治験では、下記の基準を全て満たした患者様を対象とします。
1) 本治験への参加について、本人より文書同意が得られた方(同意取得時に未成年の場合、本人からの文書による同意取得に加えて、代諾者からも文書による同意を取得する。)
2) 同意取得時の年齢が18歳以上、79歳以下の方
3) 改訂El Escorial 基準※1のdefinite、probable又はprobable-laboratory supportedに該当する孤発性ALSと診断された方
4) スクリーニング時において発症後1年半以内の方
5) 発症時点からスクリーニング時点までのALSFRS-R※2合計スコアの平均悪化速度が1ヵ月平均で-0.3点よりも速い方
6) スクリーニング時において、ALSFRS-Rの全12項目が全て2点以上の方
7) スクリーニング時において、ALSFRS-Rの3つの呼吸項目(呼吸困難、起坐呼吸、呼吸不全)が全て4点の方
8) スクリーニング時において、ALSFRS-Rの嚥下項目が3点以上の方
9) スクリーニング時において、%SVC※3が80%以上の方
10) 前観察期登録前30日以上、リルゾールを同じ用法・用量で服用しているリルゾール併用の方
11) 外来通院が可能な方
12) 採取した血液検体を用いて遺伝子解析を実施することに同意していただける方
※1 El Escorial 基準:ALSの診断基準のことをいい、診断確実度をグレード(definite、probable又はprobable-laboratory supported)で治療介入を行う基準を定めています。
※2 ALSFRS-R(amyotrophic lateral sclerosis functional rating scale revised):ALS患者の身体能力を評価する指標で12項目あり48点が満点。
※3 %SVC(Slow Vital Capacity):通常の肺気量を測定する際のゆっくりとした呼吸から算出される肺活量をいいます。
[除外基準]
除外基準とは、当てはまってはいけない基準のことをいいます。本治験では、下記の基準に一つでも当てはまる患者様は対象としません。
1) 臨床的に意義のある重度のALS以外の合併症、既往症を有し、治験責任医師又は治験分担医師が治験の対象には不適切であると判断した方
2) 精神疾患、認知機能障害、パーキンソン病を合併している方
3) 気管切開を施行している方
4) 非侵襲的呼吸補助装置を装着したことのある方
5) 薬物アレルギー又は重度のアレルギー疾患(アナフィラキシーショック等)を既往又は合併している方
6) 悪性腫瘍を合併している、又は同意取得前5年以内に既往歴を有する方
7) 脳脊髄液採取が実施困難な方
8) MRI検査が実施困難な方
9) スクリーニング時において、AST、ALTが基準値上限の3倍以上の高値を示した方
10) スクリーニング時において、CKが基準値上限の2.5倍以上の高値を示した方
11) スクリーニング時において、推算糸球体濾過量(eGFR)が45 mL/min/1.73m2未満であった方
12) 妊婦、授乳婦又は妊娠している可能性のある方
13) 患者本人又はパートナーが妊娠を希望している、又は同意取得時から治験薬の最終服用後30日までの期間、避妊を実施することに同意できない方
14) 前観察期登録前30日以内にエダラボンを使用している方
15) 同意取得日以降、リルゾールの用法・用量を変更、又は服用中止した方
16) 過去にEPI-589を服用したことのある方
17) 同意取得前に他の治験に参加し、かつ同意取得時点で他の治験薬投与から30日間経過していない患者又は同意取得時に他の治験に参加又は参加を予定している方
18) 同意取得前に細胞治療、又は遺伝子治療を受けた方
19) 治験責任医師又は治験分担医師が本治験への参加を不適当と判断した方
被験者数と期間
・目標被験者数 | 10例(治療期登録被験者として10例) |
・治験実施期間 | 2021年8月~2023年10月 |
・前観察期被験者登録予定期間 | 2021年9月~2022年5月 |
・被験者ごとの実施期間 | 同意取得日から事後観察期4週まで |
研究実施体制
・治験代表者 | 和泉 唯信(徳島大学病院 脳神経内科) |
・治験調整医師 | 藤田 浩司(徳島大学病院 脳神経内科) |